放射線科の概要
放射線科の業務は大きく分けて画像診断、放射線治療、Interventional Radiology治療(以下IVR治療)の3つに分類することができます。
画像診断では、放射線部で撮影されたCTやMRI、核医学検査などの検査画像に対し、放射線診断専門医が画像診断レポートを作成しています。異常所見の見落としを防ぐほか、画像診断の専門家という立場から正確な診断・治療方針決定の一助となることを目的としています。
放射線治療は、手術と抗がん剤に並ぶ「がん治療の3本柱」と言われています。がんを治す治療法のひとつとして現代医療では無くてはならないものとなっています。和歌山労災病院では、2023年度に放射線治療機器の更新があり、「TrueBeam(トゥルービーム)放射線治療システム」を導入しました。詳細は、下記の『放射線治療』の項をご参照ください。
IVR治療は、カテーテルを用いて行う血管内治療を代表としたX線透視下で行う治療です。手術に比べて傷口が小さく全身麻酔なしで実施できるため、患者様の体の負担を低減することが可能です。
*当科では、画像診断分野における地域医療連携の一環として、かかりつけ医の先生方からの画像検査依頼を受け付けております。詳細はこちらをご参照ください。
画像診断
当院では2022年度より新たに画像診断センターを立ち上げ、読影業務に専従する医師を配置することで、医療の質・安全性ともに高いレベルでの診療を実現しております。また検査画像のクオリティについても放射線技師と協力して日々アップデートを進めており、地域の患者様へより良い医療を提供できるよう尽力しております。
以下に当院で採用している画像検査機器をご紹介いたします。
1) CT
- SIEMENS社製 SOMATOM go. Open Pro
2023年度から導入されたCT装置です。従来よりも早い速度で撮影でき、呼吸などによる画像のブレを抑制することが可能です。また、動画のようなCT画像(4D-CT)を撮影することができ、例えば肺癌病変の呼吸移動などが評価可能です。これにより高精度な放射線治療計画を作ることも可能となっています。
2)MRI
- Philips社製 Ingenia 3.0T
- SIEMENS社製 MAGNETOM Altea 1.5T(2024年度 導入予定)
Ingenia 3.0T では従来よりも高速・高精細な撮像が可能です。2023年度より当院では、MRIを用いてPET-CTに近い画像が得られるDWIBS(ドゥイブス)という撮影方法を積極的に実施しています。PET-CTと比較して、検査時間が短いことや絶食の必要が無いこと、放射線被ばくが無いことなどの利点があります。
放射線治療
【放射線治療機器の更新について】
和歌山労災病院では、2023年度に放射線治療機器の更新があり、「TrueBeam(トゥルービーム)放射線治療システム」を導入しました。
放射線治療にも様々な放射線を使用した治療があります。一般的にはX線を使用した治療を放射線治療と呼ぶことが多いです。他には、γ線を使用したγナイフ治療や陽子線や重粒子線を用いた粒子線治療などがありますが、これらの放射線治療は当院では行えません。当院では、X線と電子線を使用した放射線治療となります。旧治療機器では、X線を使用した従来の治療(3D-CRT)のみ行っておりましたが、TrueBeam(トゥルービーム)放射線治療システムではX線を使用して3D-CRTだけでなく、定位放射線治療(SRT)や強度変調放射線治療(IMRT)/強度変調回転照射治療(VMAT)といった高精度放射線治療が可能となりました。
*TrueBeamの導入には、日本赤十字社和歌山医療センター 医学物理士 石原佳知先生と橋戸宏輔先生、さらに和歌山県立医科大学 医学物理士 若林和樹先生にお力添えを頂きました。心より感謝申し上げます。
【IMRT/VMATとは】
強度変調放射線治療(IMRT)は、色々な方向から放射線を照射する時に放射線の強さを変える照射方法です。これにより、腫瘍の形状が複雑であったり、腫瘍の近くに正常組織があっても、腫瘍に放射線を集中して照射ができます。近年では、IMRTの応用である回転照射に強度変調を組み合わせた、強度変調回転照射治療(VMAT)が主流になってきています。強度変調放射線治療により、治療効果の向上、副作用の低減が期待されます。
強度変調回転照射治療(VMAT)
写真のように機器が体の周りを回転しながら強度変調治療を行います。回転数は症例によって異なりますが、おおむね1-2回転です。
例)前立腺がんの線量分布の違い
従来の放射線治療(3D-CRT)と強度変調回転照射治療(VMAT)を比較してみると、VMATでは、前立腺と精嚢にマージンを付けたTarget(赤で囲まれた領域)の形状に合わせて集中的に照射できており、かつ正常組織である直腸(茶色で囲まれた領域)への被曝が低減されています。(赤→黄→緑→青の順で高線量)
(IMRT/VMATの適応疾患)
『限局性の固形悪性腫瘍』が保険適応となっております。固形悪性腫瘍は血液がん以外の、臓器や組織などで塊をつくる悪性腫瘍の総称です。多臓器への転移等がある状態では保険適応外となります。
【定位照射】
当院でも治療開始に向けて準備中です。
【放射線治療について】
放射線治療は、がんの種類や進行状況と患者様の体の状態に応じて、根治を目指す治療から疼痛などの症状を緩和させる治療まで幅広く使用されています。
放射線治療は、1895年にX線が発見された翌年に始まったとされています。以降、様々な治療装置による放射線の照射方法が開発されてきました。特に近年では治療機器の急激な進化により、従来の装置では治療困難となっていた悪性腫瘍にも対応できるようになり、疾患によっては手術に匹敵するほどの治療成績も報告されています。
放射線治療は、放射線の照射によりがん細胞のDNAに損傷を与えて死滅させる治療法です。手術、薬物療法と合わせて、がん治療における3大療法の1つです。がん細胞周囲の正常臓器を温存することが可能で、体に負担が少ないのが大きな特徴になります。体に負担が少ないため、体力の問題で手術が難しい御高齢の患者様や、合併症のため手術が困難である患者様にも対応することが可能です。しかし、海外に比べて日本では、まだまだ放射線治療を受ける患者数が少ないのが現状です。これは、本来、放射線治療によって恩恵を受けられる患者様が十分な医療を受けられていない事を示しています。
当科では医師、診療放射線技師、看護師を筆頭に様々な職種が連携しあうことで、安全・安心な治療を提供できるよう努めております。どんな些細な事でも気軽に相談いただけるような医療現場を目指しております。
【外来受診から治療までの流れ】
問診や検査データをもとに放射線治療が適応であるか担当医が判断します。状況に応じて追加検査を行うことがあります。
放射線治療の適応と判断した場合、放射線治療の日程、総治療日数、目的や効果、副作用について説明します。また、看護師から日常に関する注意点なども説明します。
説明を受けた上で、同意が得られれば治療に向けて準備を進めていきます。
治療を行う際に、毎回同じ姿勢を保持できる事が必要となるため、必要に応じて患者様一人一人に専用の固定具を作成します。その固定具を使用してCTを撮影します。撮影時に体にマーカーを置き、ペンでラインを引きます。治療の位置決めの際に重要となりますので、治療終了までなるべく消えない様に注意してください。
治療用に撮影したCTを用いて、これまでの画像診断情報、病理診断から最適な治療計画を作成します。また、作成された治療計画が安全に遂行可能かどうかを治療技師が検証します。複雑な治療計画もありますので、この過程は数日から2週間程度が必要になります。
CT撮影から治療開始までの期間で体調の変化や疑問点がなかったか確認させて頂き、作成した治療計画について説明します。問題なければ放射線治療を開始します。
治療中は、治療台の上でCT撮影時と同じ姿勢を保持して頂きます。治療中は、台が動いたり、体の周りを機械が回転したりします。放射線照射に伴う痛みや熱さ等はありません。治療時間は、20分程度から1時間以上かかるものまで様々です。特に初回の治療時間はやや長くなります。基本的に治療は平日毎日行い、土日祝日は休みとなります。(GWや年末年始などの長期間の休日の際には、適宜、治療を行います)
【治療中の生活、注意事項について】
治療中の生活はいつも通りにして頂いてかまいません。体調に問題がなければ仕事も継続可能です。
注意事項は治療部位によって変わりますので、外来受診の際に詳しく説明させて頂きます。
【治療後】
放射線治療による副作用は、治療中だけでなく、治療後数か月で出現する事があります。治療後も外来で治療効果や副作用についてフォローさせて頂きます。
【追記】
新治療装置であるTrueBeamは2023年12月より稼働しております。今後も当院で行っている治療等をホームページ上に掲載していく予定です。何か気になることがありましたら、お気軽に放射線科に御相談下さい。
IVR治療
レントゲン画像を用いて体内の治療を行うことをIVRといいます。血管内カテーテル治療が代表的な治療となります。
当院では脳や頚部は脳神経外科、心臓や血管は循環器内科、腹部は放射線科とそれぞれが分担して行っています。当科では腹部のカテーテル治療では肝臓がんに対するカテーテル治療(TACE)などを行っています。肝臓疾患にかかわる治療が多く、肝臓内科と協力して行っています。
スタッフ紹介
三谷 康幸 | 放射線科部長 平成4年 和歌山県立医科大学卒業 専門:放射線画像診断 インターベンショナルラジオロジー 日本医学放射線学会専門医 マンモグラフィー読影認定医 |
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千葉 尭弘 | 第二放射線科部長 平成20年 関西医科大学卒業 専門:放射線治療 日本放射線腫瘍学会・日本医学放射線学会 放射線治療専門医 日本医学放射線学会研修指導者 日本核医学会PET核医学認定医 肺癌CT検診読影認定医 |
稲垣 利紀 | 放射線科医師 令和3年 和歌山県立医科大学卒業 専門:放射線治療 |
塩谷 健 | 放射線科医師 平成14年 徳島大学医学部卒業 専門:放射線画像診断 日本医学放射線学会認定医 |
寺田 正樹 | 画像診断センター長 昭和58年 和歌山県立医科大学卒業 専門:放射線画像診断 日本医学放射線学会専門医・研修指導者 日本核医学会PET核医学認定医 日本消化器病学会消化器病専門医 医学博士 |
前部屋 祐子 | 画像診断センター医師 平成25年 山口大学医学部卒業 専門:放射線画像診断 日本医学放射線学会専門医 日本核医学会PET核医学認定医 マンモグラフィー読影認定医 |